重度の知的障害がある長男=当時(26)=が知的障害者入所更生施設を抜け出し車にはねられて死亡したのは、施設側に安全配慮義務違反があったとして、小樽市の両親が施設を経営する社会福祉法人小樽四ツ葉学園(同市、☆野(かせの)喜一郎理事長)などを相手取り、三千百十四万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が十七日、札幌地裁小樽支部であった。武笠(むかさ)圭志裁判長は「過去にも無断外出しており、法人の安全配慮義務違反は明らか」として、施設側の責任を認め、約四百四十五万円の支払いを命じた。
原告代理人によると、知的障害者が施設を抜け出して遭遇した事故で、安全配慮義務違反を認めた判決は珍しい。
判決などによると、長男は二〇〇三年五月二日夜、入所していた後志管内余市町の「余市豊浜学園」を抜け出し、三日未明、施設から約四キロ離れた国道で乗用車にはねられて死亡。両親は〇四年五月、施設側に施錠を怠るなどの安全配慮義務違反があったとして、同法人と職員二人を相手取り提訴した。
武笠裁判長は「長男は事故前日、自室の窓を開け閉めするなど精神的に不安定で、無断外出の可能性を予見できたが、宿直職員は玄関の施錠を怠り、動静にも注意していなかった」と認定した。
原告代理人の西村武彦弁護士は判決について、「物事の危険性を十分に理解できない重度の知的障害者の安全を守るには、抜け出さないよう施設側が見守る必要があると認められた点で画期的」と話した。
同法人の☆野理事長は「弁護士と相談して控訴するか検討したい」としている。
両親は〇五年六月に、事故を起こした運転手を相手取り、約二千万円の損害賠償訴訟を起こし、同支部は昨年二月、約五百六十万円の逸失利益を認めたが、すでに保険金で補てんされたとして、両親の請求を棄却した。
(北海道新聞より引用)
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