2008年4月7日月曜日

聴覚障害不正 手帳取得後「軽度」の診断 医師検査16回、患者「告知受けず」

聴覚障害の身体障害者手帳の不正取得疑惑で、札幌の耳鼻咽喉(いんこう)科医(73)に聴覚障害二級と診断されて手帳を得た空知管内の七十代の男性患者が、手帳取得直後から二年半の間に十六回にわたってこの医師による検査を受け、いずれも手帳要件を満たさない軽度難聴レベルとの測定結果が出ていたことが分かった。男性は医師から障害が改善したとの告知は受けなかったといい、今年三月、行政機関の指摘で手帳を返還した。
 問題の医師は、手帳返還者の続出について、「患者による詐病」と主張しているが、手帳取得直後から手帳要件を満たしていない患者がいることを認識していた可能性があることが明らかになった。
 男性患者や関係者によると、男性は二〇〇五年三月、仲介役の紹介を受け、問題の医師の病院で受診。北海道新聞が入手した男性の計十八回の聴力検査結果表によると、〇五年三、四月の検査で両耳とも聴力レベルが一〇〇デシベル以上と診断され、「聴覚障害2級OK」との印が押された。これを受け、男性は同年六月、二級の手帳を取得した。
 しかし、取得直後の〇五年七月の検査では、両耳とも補聴器不要の三〇デシベル台に改善。今年一月まで、一-二カ月に一回のペースで受けた検査でも、最軽度の六級の要件すら満たさない二八-四二デシベルとの測定結果が続いた。
 男性は「検査ではいつも、音が聞こえたらボタンを押した。医師の指示で通院していたが、『良くなった』とか『二級でなくなった』とか言われたことはない」と証言。また、この間、手術を受けたり、症状が変化したことはないという。今年三月、二級が両耳全ろうを意味すると知り、手帳を返還した。
 身体障害者福祉法は、障害等級が変わった場合の医師の通知義務を定めていないが、札幌市内のある耳鼻咽喉科医は「普通の医師なら、劇的な聴力回復を患者に伝えないことはあり得ない」と指摘。「聴力一〇〇デシベルが手術なしで、ここまで回復する症例をそもそも聞いたことがない」と話す。
 男性患者の検査結果について、耳鼻咽喉科医の代理人を務める弁護士は「個人を特定できないため、断定的なことは言えない」としながら、「(検査結果は)患者側が詐病をかたっていたことを端的に示しているのではないか」としている。

(北海道新聞より引用)

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