学校制服の大手メーカーによる一斉値上げに対抗し、札幌市東区の市立栄中学校(競(きそう)和之校長、五百九十五人)は来春から、NPO法人の協力を得た独自のルートで低価格の制服を提供する。生活必需品などの相次ぐ値上げで限界にある父母の負担を軽減するためで、メーカーの通告通りなら、男子で三万円、女子で四万円以上の価格を約三割も安くした。全国的にも珍しい値上げへの自衛策として、PTA関係者の関心を集めており、追随する動きが広がりそうだ。
同校は男女とも特注のブレザータイプの制服を標準服に指定している。これまでは大手三社に製造を依頼。デザインはもちろん、価格も男子二万九千五百五円、女子三万六千七百五十円と同じで、生徒は三社の中から選んでいた。
同校が独自ルートの開拓に乗り出したのは、各メーカーが今秋、全国の学校に値上げを通告し、同校にも約10%アップの見積もりを提示してきたため。羊毛の主産地であるオーストラリアの干ばつや原油高によるポリエステルの高騰による生地の値上がりが主な理由だった。
栄中では男子で三万二千円、女子で四万円を超すことになり、競校長とPTAは「給食費の滞納にも見られるように、父母の負担は限界」との考えで一致。「第四の業者」を探したところ、東区のPTA関係者から、NPO法人・北海道障害者雇用拡大連絡協議会を紹介された。
同協議会は以前から、紳士用スーツを手掛ける小樽市内の縫製会社の販売を仲介する代わりに、同社から利益の一部の寄付を受け、障害者が働く農園を開設する仕組みをつくろうと考えており、この仕組みで制服の製造を依頼することにした。価格交渉は事前の予約が必要などの制約はあるものの、大手より三割ほど安い男子二万三千円台、女子二万八千円台でまとまった。
注文製造で流通マージンがかからないため、この価格でも利益は出るという。製品の質についても、競校長が工場を見学し、「スーツを作っているので、ブレザーの制服製造の技術も十分にある」と判断した。
同校は既に小学校を通じ、来春の新入生の父母にこの独自ルートを加えた四社の制服の案内を配布。入学予定者百九十五人のほぼ半数から独自ルートの制服の予約を受けた。冬休み中に一斉採寸し、三月に現金引き換えで引き渡す予定。二女の制服を予約した母親(41)は「品質が大きく変わらないなら、本当にありがたい」と話している。
学生服の業界関係者によると、詰め襟学生服を除くと、道内の中学や高校の特注の制服は、栄中と同じように数社が併売する形式が増えている。ただ、大手がほぼ市場を握っており、価格面で競争原理が働きにくいのが実情だ。
ある大手メーカーの担当者は「学校の制服はスーツ以上に耐久性が求められ、三年間は着続けられるよう、素材や縫製を工夫している」と説明。大手の寡占体制に風穴を開けた栄中の取り組みを「ほかでは聞いたことがない。本当に実現可能なのか」と注視している。
(北海道新聞より引用)
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